18年5月 クマに襲われたときのこと - 山菜狩り
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18年5月 クマに襲われたときのこと

早春の森

コシアブラやわらび採りに出かけて、クマに襲われた。

5月第2週の時は、友人と二人だった。朝、日光が斜面をしっかり照らしてから入山した。長いカヤの草原を上り始めると直ぐに獣の気配。これから登り通過する萱場に疎らに生える立木の下に何か居るように見え、足を止めて確認すると、イバラが獣のように見えているだけだった。

それでも気配は続いていたので、友人と2人大声を出したり、話をしたりしながら用心深く進んだ。

長い萱場を抜けるて尾根を歩く。『ワラビが出ていないね』とか『今年は、残雪がないね』などと会話をしながら次の尾根を登り始める。この間もずーっと気配があった。一抱えもある白樺やダケカンバ。太く大きな天然のカラマツの混じる尾根をしばらく登ると尾根が屏風のように立ちはだかる直前で一休みした。ここを登れば山菜の楽園だ。

急な斜面を登り始めて15分程で斜面のきつさが足にくる。尾根を外れ一服つけていると『パキッ』っと音がする。獣が小枝を踏み折った音だ。

音の方向に目を向けると、薄暗い林内だが黒い頭部が見えた。体は倒木に隠されているが、間違いなく熊だ。

クマは、先程まで自分達が進む方向を決めるのにいったん立ち止まって相談していた場所に居る。頭を山頂に向けて匂いを嗅いでいた。丸っこい頭と耳が印象的だった。距離にして20~25m。自分とクマの間には倒木が2本ある。立っていたのは自分、腰を下ろしていた友人には『クマだ!』と小声で伝えた。

友人に伝えた直後、クマと目が合った。そして、次に『来た・・』と友人に伝えると同時に、膝横の背負子に立て掛けてあった長柄鎌を手に取る。この間ほとんど間が開いていない。ほんの一瞬だ。

熊は、驚くことも吠えることもしなかった。たじろぐ風でもなく、急な出会いで困惑した風もない。目が合った瞬間、一気に音もなく走ってきた。鎌を持って、柄尻を構えた時熊は目前まで来ていた。『来た』の一言に即応してくれた友人と、山菜用兼ツェーギに改造した長柄鎌を構えて大声で吠えた。吠えた。吠えた。

長柄鎌は、全長が1.2m程ある。7m迄伸びるようになっていて、人がぶら下がっても折れない。そして、柄尻にはハイス鋼で作った地面に刺せる様にピンが付いている。この鎌でクマを刺して勝負に勝てる訳では無いが、戦う心づもりというか、心の支えになるというか、有ると無いでは違うものだと思っている。

クマは無音だった。体の筋肉が柔らかく、そして力ずよく蠢いていて見えた。自分たちから2-3mの距離でクマは両手を広げた。胸元の模様が一文字の様に見えたのを覚えている。

こちらに向かってきてから、2・3言目の吠え声でクマは方向を変えて、30m離れた尾根先まで走った。(両手を広げた直後だと思う)クマは、我々を左側後方下に見るように足を止め、自分たちを見下ろしている。

立ち止まった熊は美しかった。今までに出会った中で一番大きいと思う。熊は、犬の様に左前脚を上げている。次に着く足の方向で対応が決まると感じた。幸い熊は、自分たちと反対の斜面へと歩き出した。

威嚇だったのか、攻撃だったのかは今もわからない。どちらにしろ襲われたことに間違いはなく、たまたま5体満足だっただけだ。
今まで、親父と一緒に出掛けた時代から何回もクマに出会っているが、こんなケースは初めてだ。


2度目が有るかもしれない。。。

次の恐怖は、『この場をすぐに離れて、萱場まで戻れるか?』ということだ。
今回は5体満足で過ごせたが、次に攻撃されては分からないからね。

声を出しながら、頻繁に後方を確認しながら下った。親父は『慌てず、焦らず、悠々と下る』と言ったけど、難しいんだな~ これが。。。。

でもね。焦ってはダメ。走ってはダメ。焦れば周囲の気配は感じられないし、走っては転倒してケガをする。自分みたいに週末に山に入る人間と、親父のように『稼業で毎日奥山に入る人では、違いすぎるよ』と、自分の挫けそうになる心を慰めたりしてね。。。

さて、幸い気配もなく無事に萱場まで戻ることが出来た。友人と一服した。色々と話した。暗い林内から、お日様のあたる萱場へ出ただけで、饒舌になっている自分に気が付く。ここは携帯も通じるし、見晴らしがよい。早めに発見できれば対応が出来るかもしれないという期待感があるからだ。車まではまだ距離があるんだけどね。。。

一服後、萱場を避けて人家のある方向の斜面を下った。所々、廃道沿いにウドがある。少しずつ背負子が重くなったが、クマが食べたと思われるミズナラやコナラの枝が落ちているのが気がかりだ。秋のキノコや春の山菜で入山者が減っているのであろう。


クマに出会わないことが最良だ。でも、山も川もクマがいる。彼らの生活の地に入り込むんだから、リスクは避けられない。山や川、普段生活している場所でも、明らかな管理責任者や責任の範囲が明確化されている場面を除き、行動決定の責任は自分にある。例えば、交通整理の警備員に促されて車を走られせ事故を起こしても、事故の責任をすべて警備員に転嫁はできない。いくら促されても、運転している車の操作は運転者によるものだからだ。警備員の誘導は、参考程度に考えていた方がいいと思う。

山も同じだ。登る下る、非難するなど、全ては自分の決定で行い、その決定の責任は自分にある。このまま尾根を登ったらいいのか、天候による下山はどうするかなど、常に考慮しておきたいものだ。

人は、人と関わって生きている。山で何かあれば家族や職場に迷惑をかけるだろう。また、捜索に出てくれた方々など、沢山の人の手が必要になる。






ワサビとフクジュソウ


振り返ってみると。。。
① クマは美しかった。
② 方向転換の直前で両手を広げられて、胸元の白い毛が広く大きく見えたのは、タックルするつもりだったのだろうと思う。
③ 熊からは倒木の関係上、自分の首から上しか見えていなかったはず。クマは、友人が立上り状況が急変したのでアタックを辞めたんだと思う。
④ 熊撃退スプレーは、自作の即座に出せるホルダーで腰に付けている。
⑤ 前回の玉原高原での、倒木の根元で鉢合わせした時も、スプレーを取り出せなかった。
⑥ 長柄鎌を握るのに、一瞬目を離したのは、マイナスだったかもしれない。
⑦ 今回は、入山直後から尾行されていたと思う。
⑧ 昨年、30mほど先のコシアブラの生えるチシマザサの中を、慌てて下る獣がいた。
⑨ 昨年の笹音から想像する大きさと、今年の熊の大きさは合致すると思う。
⑩ 20年近く通っているが、大きな糞があっても入山者が多いため、間近で会う機会が少なかった。
⑪ 今年は入山者が少なく、麓までクマが下がってきている。
⑫ 声も出した。話もした。煙草も吸った。鈴は友人と合わせて4つ。
⑬ クマに、鈴や話し声は全く効き目なし。
⑭ 長柄鎌や剣鉈を装備しているが、熊との戦闘では勝てない。
⑮ これらの装備は、自分の心を折れないようにする補足物だ。でも、無いと途端に弱くなる。
⑯ 気配が感じられるときには、近い遠いは別にして必ず獣にであう。もっと感覚を研がなくてはいけない。
⑰ 1人で山に入ってはいけない。お互いに離れてはいけない。
⑱ 熊撃退スプレーを使う場面を想像した。今回は発見から目前に迫るまで時間があったから使えた事案であろう。
⑲ 半面、鎌を持った移動中は鎌を握りしめてしまう。それだけ有事になった時、心の余裕がない証拠だ。
⑳ 足に噛みつかれた時などは、スプレーを噴射できるかもしれない。もう、その時点ではスプレーしか手元にないからだ。
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